不動産を売却した時にかかる税金とは?計算方法や特例についても解説
不動産を売却して得たお金は全てが利益となるのでしょうか?
答えは、もちろん「NO」です。
不動産売却時には入ってくるお金もあれば出ていくお金もあります。
出ていくお金の一つが税金です。
「売却して得たお金を次の住居購入の頭金にしよう」
「自宅を売却して老人ホームなどの福祉施設への入居費に充てよう」
このように、不動産売却をする際にはそこで得た資金の使用使途などが明確にある場合も少なくはないでしょう。しかし、売却時に掛かる税金を把握しなければ手元に残るお金を算出できません。
税金の話となると、専門用語や面倒な計算も相まって、積極的に理解することを避けてきた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、不動産売却において意外にも大きな支出となる税金について、
基礎知識を中心にわかりやすく解説していきます。
いざという時の支払いに慌てないためにも、ぜひご参考にして下さい。
目次
- ○ 不動産売却をすれば税金がかかる!
- ○ 売却手続きで発生する税金
- ・印紙税
- ・登録免許税
- ・仲介手数料における消費税
- ○ 売却で得た「譲渡所得」に掛かる税金
- ・譲渡所得税と住民税
- ・復興特別所得税
- ○ 不動産売却では4つ特例を活用しましょう!
- ・マイホーム売却時の3000万円特別控除の特例
- ・マイホームの所有期間が10年を超える際の軽減税率特例
- ・相続した空き家売却における3000万円特別控除の特例
- ・公共事業のために売却した際の5000万円特別控除の特例
- ○ おわりに
不動産売却をすれば税金がかかる!
不動産を売却すれば様々な経費が発生し、税金がその一つであることはお伝えしましたが、この税金に関しても、発生するタイミングや種類が異なります。
不動産の種類や面積といった要素から、譲渡するタイミングによっても大きく税額が変わるため、不動産の本格的な売却活動をする前に、しっかりと把握しておくことが重要です。
しかし、税額の計算などは税務上の規定により細かく定められているだけでなく、年度によって税率が変化することもあります。
税金に関しては税理士に丸投げする、といった方もいらっしゃいますが、
信頼できる税理士の方が身近にいらっしゃるとも限らないでしょう。
このような理由から、不動産の売主自身が税金について学ぶ意識が低下していることは懸念すべき事態です。
ご自身の大切な不動産を売却した際に、どのような税金がいくらほど掛かるのか、また支払う税金を少しでも抑える手立てはないのかという事を主題とし、次セクション以降で解説していきます。
売却手続きで発生する税金
不動産売却において、税金の支払いが発生する局面は大きく2つに分けられます。
その一つが、「売却手続き時に発生する税金」です。
下記の3つの税金を把握して手続きに臨みましょう。
印紙税
印紙税とは、商業取引に関する文書に対して課税されるものです。
ここで言う「文書」は、「課税文書」と呼ばれるものであり、第1号文書から第20号文書までの20種類にわたります。
印紙税法に規定されている課税文書の例を挙げると、契約書や領収書、株券、債権、借用書や手形などに係るものがあります。
契約書であっても、契約金額が1万円未満であれば非課税文書として扱われるため印紙税が不要になりますが、不動産の場合は金額的にも非課税となるケースはないと考えてよいでしょう。
不動産売却時において印紙税を納付する方法は、課税文書である不動産売買契約書に収入印紙を貼付し、印鑑または署名にて消印をする形を取ります。
もしも、収入印紙の貼り忘れや消印を怠った場合、本来納付しなければならない印紙税の3倍相当の過怠税を課せられることもありますので注意しましょう。
また、印紙税の納税義務者は課税文書の作成者である事も把握しておきましょう。
一般的に不動産売却の場合は、売主分と買主分の2通を作成するため、印紙代はそれぞれで負担し税金は折半するケースが多いです。
【不動産売買契約書に掛かる印紙税は下の表を参考にしましょう。】
出典:不動産売買契約書の印紙税の軽減措置(国税庁)
(注) 不動産の譲渡に関する契約書のうち、その契約書に記載された契約金額が10万円以下のもの(契約金額の記載のないものを含みます。)は、軽減措置の対象となりません(税率200円)。また、契約書に記載された契約金額が1万円未満のものは非課税となります。
なお、平成26年4月1日から令和6年3月31日までの間に作成されるものに関しては、標準税率よりも低い軽減税率が適用されます。
登録免許税
登録免許税とは、不動産の名義変更時に支払う税金です。
計算式は下記のとおりです。
※抵当権設定登記の場合は、債権金額 × 税率 となります。
この税率は登記するのが土地なのか建物なのか、また建物が新築か中古かによっても変動します。
◆所有権移転登記(土地・建物)→ 2.0%◆
◆抵当権設定登記 → 0.4%◆
出典:法務局HP
登録免許税は、原則として現金で納付し、その領収書を登記申請書に貼付して提出することになります。
また、こうした登記に係る手続きは司法書士に依頼する場合が多いので、司法書士手数料と合わせて登録免許税を司法書士宛に入金し、法務局にて代理で支払ってもらう形が一般的です。
仲介手数料における消費税
不動産売却時に不動産会社に仲介してもらった場合、その不動産会社に成功報酬として仲介手数料を支払うことになります。
この仲介手数料には、10%の消費税が掛かります。
そもそもの仲介手数料は宅建業法によって定められた上限に基づいて算出されますが、当然、売却価格が大きくなればなるほど手数料も大きくなります。
売却価格によりますが、意外にも大きな支出となるので見落とさないよう留意しましょう。
売却で得た「譲渡所得」に掛かる税金
上述した手続きに係る税金のほかには、「売却益に係る税金」があります。
不動産を売却した場合、元々購入時に掛かった費用や、売却時の手数料などの諸費用を差し引いた最終的な利益や損失のことを譲渡所得と言います。
上記の譲渡所得として利益が出た場合に、そこから特定の条件に基づいた特別控除を差し引くと、課税譲渡所得が求められます。
そして最終的に、課税譲渡所得に税率をかけて算出される税金が譲渡所得税となります。
税率は、売却する物件の用途や所有期間によって異なります。
下記を参照して詳細を確認してみましょう。
出典:譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)(国税庁)
譲渡所得税と住民税
譲渡所得税と住民税は、当該物件の所有期間によって大別されます。
所得税 = 30.63%
住民税 = 9%
◆長期譲渡所得(5年超え)◆
所得税 = 15.315%
住民税 = 5%
所有期間は、譲渡した年の1月1日現在において、所有期間が5年以下か、5年を超えているかにより判断されます。
また、短期と長期それぞれの計算方法の詳細は下記を参照してください。
短期譲渡所得の税額の計算(国税庁HP)
長期譲渡所得の税額の計算(国税庁HP)
復興特別所得税
復興特別税とは、所得税額に対する付加税であり、2013年(平成25年)から施行されています。現在の法律では、2037年(令和19年)までの間に生ずる譲渡所得税額において、復興特別税が課せられることが定められています。
復興特別税として、基準所得税額 × 2.1% の税が課せられます。
不動産売却では4つ特例を活用しましょう!
土地や建物問わず、所有している不動産を売却した際には様々な税金が生じる事はお分かりいただけたでしょうか。
しかし、そのすべてを負担する必要があるかと言えば、そうではありません。
実は、税金支払いの負担を減らせる特例はいくつも用意されています。
今回はその中でも代表的な特例の4つをご紹介します。
マイホーム売却時の3000万円特別控除の特例
マイホーム(居住用不動産)を売却した際には、所有期間の長短を問わず譲渡所得から3000万円を控除することが出来ます。
先述した計算式に基づいて、例を挙げてみましょう。
= 1700万円(譲渡所得)
※ここで3000万円控除の特例を適用しなければ、所有期間に応じて1700万円(譲渡所得)に税率を掛けて納税額を算出する。
↓3000万円特別控除を適用すると…
1700万円(譲渡所得)- 3000万円(特別控除)= 0円(課税譲渡所得)
3000万円特別控除の特例を適用した結果、課税対象の譲渡所得が0円となったため、税金を納める必要がなくなりました。
一般的に居住用のマイホーム売却時にはこの特例は適用できますが、いくつか適用条件があるので詳細は下記サイトにて確認することを推奨します。
出典:マイホームを売ったときの特例(国税庁)
マイホームの所有期間が10年を超える際の軽減税率特例
マイホーム(居住用財産)を売却した年の1月1日において、家屋や土地の所有期間が10年を超えていることなどのいくつかの条件がありますが、この特例を適用することで先述した長期譲渡所得よりも税率が抑えられます。
課税譲渡所得が6000万円以下の部分
所得税 = 10%
住民税 = 4%
課税譲渡所得が6000万円超えの部分
所得税 = 15%
住民税 = 5%
その他適用条件の詳細は下記で確認してみましょう。
出典:マイホームを売ったときの軽減税率の特例(国税庁)
また、この特例は3000万円特別控除の特例と併用可能なことも把握しておくと良いでしょう。
相続した空き家売却における3000万円特別控除の特例
相続または遺贈により取得した被相続人の居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地を売却した際には、3000万円の特別控除が受けられます。
仕組みとしては先述した3000万円特別控除と同様ですが、諸条件は異なります。
こちらは適用期限があり、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売却される相続空き家に限られる点には注意しましょう。
その他の適用条件は下記をご参照ください。
出典:被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
公共事業のために売却した際の5000万円特別控除の特例
土地収用などにより、公共事業のために売却された不動産に対しては、5000万円特別控除の特例が適用できます。
最初に買取り等の申出があった日から6か月を経過した日までに土地建物を売却していることなど、適用条件がいくつかあるので下記サイトにて確認することを推奨します。
出典:収用等により土地建物を売ったときの特例(国税庁)
おわりに
いかがでしたか?
不動産売却時には、様々な税金がかかる一方で、負担を抑えるための特例があることもご理解いただけたでしょうか。
税金の額や特例適用の条件は、所有期間や売却するタイミングによっても変動することが重要なポイントです。
売却に踏み出す前に、税金という側面から適切な時期や売り時を見極めていきましょう。
生津 博道(イキツ ヒロミチ)
福岡県福岡市を中心に、不動産売買事業を行っております。
エリアに精通していることはもちろん、
豊富な知識でお客様にしっかりとご納得いただけるよう努めて参ります。
・宅地建物取引士
・相続診断士
宅建免許番号 福岡県知事(1)第20483号
所属団体 社団法人全国宅地建物取引業保証協会