重要事項説明書には何が書いてある?主要な内容やチェックポイントを解説
不動産売買で買い手が確定した場合、
契約の前に必ず行わなければいけないのが「重要事項説明書」の説明です。「重説」とも略されますが、賃貸仲介であっても宅地建物取引業に該当する取引を行った場合は義務付けられている重要な行為です。
近年では時代の流れを踏まえ、ビデオ通話などを用いた「IT重説」も可能となりました。
義務として扱われるとても重要な手続きですが、
「不動産会社の人が読み上げてくれるのを聞いておけばいいだろう」
「聞いていても正直よくわからない」
このように思われる方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、重要事項説明書ではどのような内容が記載されているのか、とりわけ主要とされる内容やチェックポイントなどを解説します。
ご自身が不利な取引に巻き込まれないためにも、しっかりと理解するように努めましょう。
目次
- ○ 重要事項説明書とは
- ・概要
- ・主な目的と説明義務
- ・「聞いていない」「忘れた」は通用しない
- ○ 重要事項説明が行われるタイミング
- ○ 内容は大きく3つに分けられる
- ・物件に関する事項
- ・取引条件に関する事項
- ・その他の事項
- ○ その他重要事項説明時のチェックポイント
- ・説明者が有資格者であるか
- ・記載物件が間違いないか
- ・権利関係(主に所有権)を明確にできているか
- ・再建築は可能か
- ・将来設計を考慮したリスクの確認
- ○ おわりに
重要事項説明書とは
不動産を購入する場合、必ず経験する「重説」とは、いったいどのような内容になっているのでしょうか。手続きの内容だけでなく、目的や注意点に関しても把握しておくことが重要です。
概要
宅地建物取引業法で定められている重要事項説明とは、物件そのものや取引に関する詳細な情報や注意事項などを買主に対して伝達することです。そして、重要事項説明書とはその内容をまとめた書類のことです。
この書類は物件にもよりますが数ページ以上に及ぶものであり、場合によっては説明に数時間を要することもあります。
物件に関する概要だけでなく、都市計画情報や売主の権利関係まで詳細にわたって説明が行われます。
主な目的と説明義務
重要事項説明はなぜ義務付けられているのでしょうか。
不動産は個人間で取引できる資産としては最も高額な部類に入ります。
そのため、誤認があるまま不動産取引をしてしまうと大きな損害を被る可能性があります。不動産の知識が少ない一般消費者を念頭にし、誤った認識で契約することを防ぐための制度なのです。
そしてこの重要事項説明は、売買契約が成立する前に宅地建物取引士の資格を有する者が書面に記名押印をした上で、買主に対して口頭行うことが義務付けられています。
書面だけを渡して口頭説明がなかった場合などは宅地建物取引業法違反となり処罰の対象となります。
「聞いていない」「忘れた」は通用しない
上述したように、仲介事業者の説明義務はあるとはいえ、説明を受けて押印をした場合、買主側が後になって「聞きそびれていた」、「聞いたけど忘れた」といった主張は認められない点には注意しましょう。
買主側も不明点は何度も確認し直すことが重要です。
重要事項説明が行われるタイミング
重要事項説明が行われるタイミングも宅建業法によって規定されています。
それは、売買・賃貸契約が締結される前です。
理想としては重説を行った後、一定期間空けて熟慮して契約締結に臨むのが理想ですが、
一般的には日程や手間を短縮する観点から契約と同日に行われることが多いです。
内容は大きく3つに分けられる
重要事項説明書には具体的にはどのようなことが書かれているのでしょうか。
組み込まれる内容は、その他の事項まで含めると大きく3つに分けられます。
ここではそれぞれ代表的な事項を挙げて解説します。
物件に関する事項
一つ目は、物件に関する項目です。
登記記録されている事項には、権利の種類や内容の詳細が記載されています。所有権以外にも買戻し特約などの事項が記載されていないか十分に確認しましょう。権利関係は見逃すと後々でトラブルになる可能性が高いので要注意です。
法令上の制限に関する事項では、建物を建築する際の規制に関する法律事項が記載されています。例えば建ぺい率や容積率、接道状況や増改築の規制などもここでしっかりと確認しておきましょう。
私道に関する負担に関する事項では、対象不動産と関連する私道について買主が利用制限や何かしらの負担を受ける場合はその内容を記載しなければなりません。
飲用水・電気・ガスの供給・排水施設の整備状況に関する事項では、インフラの有無だけでなく公営か私営かも記載されています。インフラは使用開始にも様々な手続きが必要になるので見落とすことなくしっかりと確認しておきましょう。
取引条件に関する事項
二つ目は、取引条件に関する事項です。
代金、交換差金および借賃以外に授受される金銭に関する事項では、代金、交換差金および借賃以外の金銭の授受がある場合、その名称や金額だけでなく、いかなる目的で発生するものかを明記しなければなりません。代表的なものには、固定資産税等清算金・管理費、修繕積立金等清算金などがありますが、ここに記載する内容は法律上明確に決まってはいません。手付金やその他清算した金銭に関しては記載してもらうと良いでしょう。
契約の解除に関する事項は契約の存否に関わる非常に重要な内容が記載されています。どのような場合に契約の解除が可能か、またその手続き方法や効果が及ぶ範囲などが記載されています。
損害賠償額の予定または違約金に関する事項では、文字通り損害賠償や違約金についての定めが記載されています。また、売主が宅建業者の場合は、損害賠償と違約金の合算金額が売買代金の20%以下にしなければならない、なども記載されているので確認しておきましょう。
手付金等の保全措置の概要には、未完成物件や完成物件に分けて、保全措置の有無などが記載されています。宅建業者が売主となる場合に、一定以上の手付金を買主から受け取る際に義務付けられている保全措置です。保全方法についても保証委任契約なのか、保証保険契約なのかなど記載があるので見落とさないようにしましょう。
宅地または建物に契約の締結当時に隠れた瑕疵(欠陥など)があった場合に、売り主が買い主に対して責任を負います。しかし、売主が破産や倒産状況にあり保証できない場合に、保険加入などの備えをしているか、といったことが瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要に記載されています。
その他の事項
上記もすべてではありませんが、その他では国土交通省令・内閣府令で定める事項や割賦販売に係る事項が記載されています。
このセクションで割愛した部分も確認したい方は、以下をご参照下さい。
重要事項説明の様式例(国土交通省)
その他重要事項説明時のチェックポイント
重要事項説明書自体は、上述した内容で構成されていますが、
その他説明時にチェックすべきポイントをまとめましたので最後に確認しておきましょう。
説明者が有資格者であるか
説明者は専門知識と経験、調査能力を持つ宅地建物取引士でなければいけません。
宅地建物取引士とは、宅地建物取引業法に基づき定められた国家資格取得者のことです。
説明時には、宅建士証を提示し、書面を交付して対面で行わなければいけません。
上記に漏れがあった場合は、宅建業法違反にもなりかねないので冒頭でしっかりと確認することが必要です。
記載物件が間違いないか
当然のことですが物件住所などに誤りがないかはしっかりとチェックしましょう。書面上ではプリントミスなどもあり得ます。冒頭でお伝えしたように、後々になって聞いていなかった、聞いたけど忘れた、見落としていた、といった主張は認められないので留意しましょう。
権利関係(主に所有権)を明確にできているか
自らの所有権が完全であるかを確認しましょう。また、その他権利関係の記載があればしっかりと確認しましょう。
再建築は可能か
当該物件が建築基準法などに照らして再建築が可能であるかは事前に知っておくと良いでしょう。災害やライフステージの変化によりいつ建て直しを行うかは分かりません。望んだ時に建て直しができなければ大問題です。
建築時には適法であっても、その後の法改正により再建築不可物件となってしまっている物件も存在します。価格は安くなるので一定数飛びついてしまう方もいますが、しっかりと確認しておく必要があります。
将来設計を考慮したリスクの確認
不動産を購入する場合は、一定のリスクは伴います。
例えば、都市計画で近隣に高い建造物ができて景観が損なわれたり、鉄道が敷かれるなどもあれば、子供のことを考えると日当たりや風通しも一つのリスクとして存在し得るでしょう。
重要事項説明では物件に関する事項の説明もあるのでしっかりと確認しておきましょう。
おわりに
重要事項説明に関して、主要な内容とチェックポイントを解説しました。
実際には長時間かかるうえに細々とした内容のため、多くの方が好む手続きではないでしょう。
しかし、契約前の最後の確認でもあります。
記事内でもご紹介した重要事項説明書の実例にも、事前に目を通すことを推奨します。
後悔のない不動産取引を行うためにも、しっかりと準備して重要事項説明に臨みましょう。
生津 博道(イキツ ヒロミチ)
福岡県福岡市を中心に、不動産売買事業を行っております。
エリアに精通していることはもちろん、
豊富な知識でお客様にしっかりとご納得いただけるよう努めて参ります。
・宅地建物取引士
・相続診断士
宅建免許番号 福岡県知事(1)第20483号
所属団体 社団法人全国宅地建物取引業保証協会